【1. 導入】
「あのカレー屋さん、いつの間にか無くなってたんだよね──」
そんな声がどこかから聞こえてきます。
駅のそばでふと立ち寄ったあの欧風カレー、学生時代に通ったスパイスカレー、ふらっと一人で入れたキーマの名店……。気づけば、あの味も、あの笑顔も、静かに姿を消していました。
【2. 閉店ラッシュの実態】
帝国データバンクの最新調査(2025年7月10日発表)によれば、2025年上半期だけで全国のカレー店約210店舗が閉店しています。
また、同社が2025年6月に発表したレポートでは、2024年度(2024年4月〜2025年3月)におけるカレー店の倒産件数は13件で、2年連続の過去最多を記録。
さらに、2025年上半期の飲食店全体の倒産件数は458件にのぼり、過去最多ペースで推移しています。
実際の閉店数は、法的整理に至らない廃業や撤退も含めれば、さらに多い可能性があるとされています(Yahoo!ニュース/Forbes Japan/TIS/FNNプライムオンラインより)。
【3. 具体例:相次ぐ名店の閉店】
カレー店の倒産・撤退は、全国的な傾向として加速しています。帝国データバンクによると、2024年度のカレー店倒産件数は過去最多の13件。実際には2023年以降は以下のように老舗店、有名店が閉店したこともニュースになっています。
「インドカリー夢屋」(東京都台東区)→2023年8月閉店
「カレーの店 マーブル」(東京都中央区)→ 2023年10月閉店
「ONDEN」(東京都原宿区)→ 2023年12月閉店
「かれーや」(東京都調布市)→2024年1月閉店
「ベンガル」(東京都千代田区)→2024年11月事業停止
「カレーハウス印度屋」(群馬県高崎市)→2025年2月閉店
【4. 西武線でも相次ぐ名店の閉店】
寂しい限りのニュースですが、小規模な閉店を含めればその数はさらに多くなるでしょう。そして、実際にそれは西武線沿線も例外ではなく、2024年以降にお店の閉店が相次ぎました。
「 curry草枕」(西武新宿駅)→2024年4月閉店
オオグシ加哩堂(新所沢駅)→2024年12月閉店
いずれも個性と熱意にあふれた名店で、長年にわたって多くのファンに愛されてきました。地域に根差したお店が静かに姿を消していく光景は、沿線でカレー店を巡る者としてやはり胸が痛みます。
【5. なぜ、カレー店ばかりが…?】
閉店の理由は単一ではありませんが、多くの店舗が以下のような課題に直面していたと考えられます。
理由1. 複合的に絡むインフレ要因
原材料費の高騰、光熱費や人件費、家賃といった固定費の上昇は、いずれもインフレの影響を色濃く受けています。小麦や米、食用油、肉類、スパイスなどの価格は高止まりを続け、特に個人経営のカレー店にとっては経営を直撃する深刻な負担となっています。
理由2. 継承と多様性へのギャップ
店主の高齢化や後継者不足、働き手の不足といった課題に加え、現代のSNS映えや多様な食文化に適応しづらい老舗スタイルの飲食店は、時代の波に飲み込まれやすくなっています。伝統的な味や雰囲気が“今のトレンド”から外れがちであることも、閉店を後押ししているのです。
理由3. コロナ禍以降の反動
コロナ禍ではデリバリー需要の拡大や外食控えが進み、一時的に新たな需要が生まれました。しかし、コロナ禍の収束とともに特需は落ち着きを見せ、店舗での売上回復が遅れている状況が続きました。その一方で、コロナ禍に受けた融資の返済時期が迫り、資金繰りの厳しさが店舗経営を圧迫する要因となっています。また、スパイスカレー人気が一時的に高まった面もありますが、それのブームがひと段落した実態もあります。
【6. 今後の見通し】
帝国データバンクが2025年7月に公表した調査によれば、カレーライス1食の平均価格は441円(前年比+36.5%)と、過去最高を記録しましたが、今後は政府の備蓄米放出や野菜価格の落ち着きにより、やや価格が下がる兆しも見え始めました。一方で、飲食業全体では倒産件数が過去最多ペースで推移しており、原価が一時的に緩和されたとしても、経営環境は依然として厳しい状況が続くと見られています。
【7. 最後に──カレー店を愛する一人として】
私はただの“カレーファン”です。でも、これまで出会ったたくさんの味やお店が、少しずつ姿を消していくのを見ると、やはり寂しさを感じてしまいます。好きな味、優しい笑顔、何気ない時間──それらがなくなってしまう前に、せめてこのブログを通じて、記録に残したい。そして、ほんの少しでも応援のきっかけになれたら……そう願いながら、今日もカレー店を巡りたいですね。
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